猫のけんた君
二人の娘が産まれる前、この子(けんた)
は我々夫婦といつもべったりだった。
我が家に来たのは十年も前の事だ。
そりゃあ可愛い子猫だった。
落ち込んでソファに寝転んでいる時、
何も言わずにのそのそとやってきて、
胸の上に優しく頭を乗せてくれた。
何度も何度も。
娘が産まれてから、けんたにとっては、
大好きな妻との時間も減り、自分の
居場所探しに戸惑っていたように思えた。
最近は、子供達にもだいぶ慣れてきて、
彼らが寝静まった後、妻や私の膝の上で
喉を鳴らす。
「これこれ。これがいいんだよ。」と
互いに目を合わす。
自分のスマホの写真を見ると、最近は
けんたの写真が少ない。娘達ばかり。
だが娘達よ、彼は我が家の古株だぞ。
もう少し失礼の無いようにな。
うん、今度けんたの撮影会をやろう♪